ドンマイ

『あねとあなた』さんの作品

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『下戸の酒屋』

作 あねとあなた

私のご先祖様は下戸だった。なのに酒屋の店員を三十年もしていた。 ご先祖様はまだ名字のない江戸時代の終わりに貧しい家に生まれ、 貧しい家はさらに妹も生まれ、長男である冬治は、奉公に出る事になった。 冬治は、貧しかったからこそ、頑張って働き、金を稼ぎたいと思い商人になりたいと思った。 村の村長さんが博多の酒屋の店員になれるように計らってくれた。

村を出るとき、一生懸命働こうと思って瞳を輝かせた。 だが、酒屋の主人に、味見にと、酒を一口飲むと、途端に顔が熱くなった。 初めて飲んだ酒は首や耳までまっ赤に染まり、喉が火照り脚がガクガクと震えた。 目は白目を剥いていた。恐る恐る冬治は、酒屋の主人に頭を下げて
「クビにしないでください。この町で一番酒を売る店員になってみせるから。」
とお願いした。酒屋の主人は、
「酒も飲めないのに町一番の売り子になる?」
と大笑いして、「それなら、酒の配達をしてこい。」と大量の酒瓶を持たせ、配達をさせた。

冬治は、酒の味がわからないため、配達が仕事になったが、町一番の売り子になりたかったから、何とか酒を売りたいと思った。 ある日、隣町の菓子屋のとら屋の前を通ると酒の香りがした。
「酒の香りがする?」
と思い、口にすると、
「お菓子に酒を使うと美味んだぞ。饅頭とか。」
と冬治と同い年ぐらいの男の子の店員が言ったので、それならばと饅頭を買った。

冬治は酒ってお菓子に使えるのか?と思い、食べてみると意外と美味しかった。 冬治の家、いや村は、貧しいのでお菓子に酒を使うのを知らなかったのだ。 そこで思いついた。冬治はある思いを主人や他の売り子に言った。
「今日から、やつ時のまかないをさせて下さい。」
頭を垂直に垂らしながら言ったが、主人からは、
「どうしたんだ。台所に男が入るもんじゃねぇー。」
と言われたが、冬治は
「お、俺、酒を売りたい。だから、みりんを使った美味しい、やつ時の菓子を作って、とら屋や他の菓子屋に売るんだ。」
と言った。この話を聞いて、他の売り子からは笑われた。店の中はぷーんと酒の香りがする。 主人は、いつも、酒瓶を担いで走り回っている冬治を見て一言、
「冬治、頑張りんしゃい。」
と言って、角打ちの客のところへお喋りをしに行った。

なぜ、冬治がみりんと酒の指定したのかというと、 みりんは甘いので下戸の冬治でも少しなら呑めたし、当時は、子供達にも飲まれていたからだった。 冬治は、午前中は酒瓶を担いで、やつ時になると、団子を作った。 遊びながらでも食べられるようにと団子を串にさし、みりんを使った団子をおかみさんと一緒に作った。 だけどみりんと団子だけでは、みりんのと団子の味のつりあいが取れない。 とら屋のみたらし団子を思い出すと、あれは、醤油のつけ焼きだった。

「そうだ、つけ焼きの団子にみりんのたれをつけて、甘辛い団子にしよう。」
冬治はみりんを煮つめ、みりんダレを作った。 早速団子につけて主人に食べてもらうと、パクリと一口頬張り、「美味しい。」と言った。 その言葉を聞いて、冬治はみりんを担いでとら屋に向った。 とら屋の主人や職人達に食べさせたところ、職人達は驚き、職人達やとら屋の主人は、 冬治の勤めている岩田屋のみりんを沢山買ってくれた。

そして、冬治の考案したみりん団子は評判となり、他の菓子屋からも、注文が来るようになった。 冬治は、なんと町一番の売り子になったのだった。 そして冬治は、妹の七歳の七五三の時、綺麗な帯とたくさんの団子をお土産に携え家に帰った。 髪を結い上げてもらった妹が帯を締めてもらうと冬治は、
「こんなところに団子がある。」
と言い、妹の髪にかんざしを挿した。そして、妹ももうすぐ奉公に出るのだ。


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